ご挨拶
こんにちは。精神科医の西川祐美子と申します。
この度、富山県滑川市から診療所開設等支援補助金をいただきまして、滑川市の公園通り商店街にて「西川祐美子こころの診療所」を開設する運びとなりました。
【当院の精神科デイケアについて】
当院では、精神科の通常の外来診療はもちろんのこと、精神科デイケアにも力を入れて行ってまいります。1階で外来診療を、2階でデイケアを行います。
医学生の頃、精神科病棟のデイケアに初めて参加しました。患者さんと一緒に花見をしたり、卓球で本気になって勝負をしたり、マイクを握って楽しく歌ったりしたのをよく覚えています。そういう場だと、診察室やベッドサイドではみられない表情がみえたり、会話がいつもより弾んだりして、患者さんと前より少し打ち解けられた気がしました。その積み重ねで信頼関係が強固になり、より良い治療につながっていくと考えます。
精神科デイケアは、患者さん達に生活していく力、生きていくための力を新たに身につけたり取り戻したり高めたりしていただく場だと思っております。院内のみならず、院外での活動も認められています。診療所が街中にあることを活かして、お店で買い物の練習をしたり、図書館や入浴施設に行ったり、公園でくつろいだり、海まで散歩して海を眺めたり、といろいろなことに取り組んでいただけそうだと期待を膨らませています。また院内のデイケアルームは癒しの空間になるようゆったりとスペースを確保し、家事などの日常生活技能の習得の一環として調理実習ができるようキッチンも設置しました。
当院の精神科デイケアを通して、患者さんたちが健やかな社会生活を送るお手伝いが少しでもできたら嬉しく思います。
【精神科医として母親として】
私は精神科医であり、4人の子どもの母親でもあります。私も夫も実家は県外でして、いつも周囲の人達にお世話になりながらなんとか子育てをしてまいりました。娘3人は健常ですが、息子1人は知的障害と自閉症があり県立の支援学校に通っています。会話によるコミュニケーションが難しいので、表情や動作から気持ちを読み取るしかありませんが、彼は運動や創作活動が好きなので、一緒に遊んで情緒的な交流を図っています。小さい頃は多動や衝動性が今よりも強く、3〜4歳くらいがピークだったでしょうか。早朝に屋根のてっぺんに登っていたり、夜に行方不明になったりと、胆を冷やしたことが何度もありました。行方不明になった時には、夜にも関わらず地元の保育園の園長先生や先生達が一緒に探してくれて、畦道を歩いていた息子を園長先生たちが見つけてくれました。保育園の先生達への感謝、息子がいてくれる安心、万が一のことも起こり得たという恐怖がどれも強く感じられ、しばらく心の中が落ち着きませんでした。この出来事は、自分の働き方のみならず生き方についても考え直すきっかけとなり、命についても改めて深く考えさせられました。子育ては私の精神修養の場ともなっており、その経験は精神科医としての私の血となり肉となっています。
【当院のロゴマークについて】
・菅笠
人生は旅です。患者さんたちの人生の旅に寄り添う身として、旅のおともとして欠かせない菅笠をかぶったキャラクターとしました。菅笠は、雨や日差しや雪から身を守ってくれる存在であり、自分も患者さんにとってそのような存在でありたいと思っております。
・鳥
鳥が安心して頭に止まってくれるくらいに、患者さんにとっても親しみのある存在でありたいと思っております。止まりたい時は止まって休んでいただき、羽ばたく時が来たら自由に羽ばたいていただきたいと思っております。
【おわりに】
厚生労働省が定める「がん・脳卒中・急性心筋梗塞・糖尿病」の四大疾病に、「精神疾患」が加わって五大疾病となってから、10年以上が経過しました。しかし残念なことに、精神科へのスティグマはまだまだ根強く、「精神科は敷居が高い」と感じておられる方は多いのではないかと思います。精神疾患はあくまでも脳機能の不調であり、薬物療法や精神療法などで治療にあたります。適切な薬物療法はもちろん有益なのですが、私としては精神療法を含めた非薬物療法も必要不可欠だと感じております。精神療法、カウンセリング、デイケアといった人と人とのつながりや、太陽の光を浴びて外の空気に触れて軽く体を動かすというナチュラルな暮らしを経て、その人らしさを取り戻していかれるのだと思います。精神科は人の世だから存在する科です。ましてや現代はストレス社会です。私は精神科医の仕事を天職と心得て、人間臭く地を這いながら、職責を全うする所存です。皆様これからどうぞよろしくお願いいたします。
院長 西川 祐美子
略歴
平成21年 3月 | 富山大学医学部医学科 卒業 |
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平成21年 4月 | 富山大学附属病院 初期臨床研修医 |
平成21年10月 | 糸魚川総合病院 初期臨床研修医 |
平成22年10月 | 富山大学附属病院 初期臨床研修医 |
平成23年 4月 | 富山大学附属病院 神経精神科 大学院医員 |
平成25年 4月 | 厚生連滑川病院 精神科 医員 |
平成26年 4月 | 富山大学附属病院 神経精神科 大学院医員 |
平成27年 3月 |
富山大学大学院 生命融合科学教育部 博士課程 認知・情動脳科学専攻 終了 |
平成27年 4月 |
富山大学大学院医学薬学研究部 神経精神医学講座助教 |
令和 2年 4月 | 黒部市民病院 精神科 心療内科 医長 |
令和 7年 4月 | 西川祐美子こころの診療所を開院 |
所属学会・資格
- 医学博士
- 精神保健指定医
- 日本精神神経学会 専門医・指導医
- 日本精神神経学会 認知症診療医
- 日本サイコオンコロジー学会 登録精神腫瘍医